伍流の思考

- ごりゅうのしこう -

COVID-19 対応。安倍首相は無能なのか?

2月17日現在。日本では市内感染が広がり始めたと言える。Twitterを中心にして世間や有識者の反応を見ていると『安倍首相(および日本政府)が無能だ』という声はかなり広がってきている。支持率も急落しているようだ。

ただ僕は『彼が無能だとは思っていない』・・・その理由を今回は話してみたい。


内容としては以下の通り・・・・・・・・・・・・・・・・・

▼1:危機対応には事前の準備がかなり重要
▼2:災害時はどう転んでも政府は批判される。
   および不確定要素が多い場合には決断が難しい。
▼3:対策は危機を経験して進化する(&まとめ)

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▼1:危機対応には事前の準備がかなり重要

『政府の新型ウイルス対策会議』の招集が遅いとか、会議時間が短いことに対して『危機感が足りないのじゃないか!』と批判する声は少なくない。だが感染症の素人である政治家が大勢集まって会議で決めるタイプのものなのだろうか??

僕は違うと思う。実際には厚生労働省の担当や感染症のエキスパートが連携し次々に体制を整えていく・・・それが大事。ではその為に何が必要なのか、事前にそうやって動ける組織づくりだと思う。

アメリカの疾病予防管理センター(以下CDC) のような組織があり予算も権限もそれなりにあれば動きやすい。日本はそういう組織がないにせよ厚生労働省で危機管理の対策は練られていただろうとは思う。だが体制が弱いことは間違いない。

それは検査体制がシンガポールに比べても劣っていたことにも現れている。同国が2000件/日だった段階で、日本では500件/日・・それを1000件に増やす(後に3000件に増やすという計画を出した)と言っていた。同国より何倍も大きい国でそれはまずい。

状況に応じて独自に感染症の専門家や医療関係者や検査技術のある会社と連携して検査体制を整えるだけの権限と予算がなかったということになる。


でも、それは『安倍政権が無能だったからではない』・・・なぜなら民主党が政権を取った頃も含め、長年そういう備え(体制づくり)がされてこなかったのだから。

またそういう組織づくりは実際に危機が起こってからでないと進みにくい。日本は大地震を経験してその対策は進んだが、核戦争よりリスクが高いとも言われる感染症(バイオテロも含む)・・・ビル・ゲイツとかはトータルで考えられ資金力があり動ける稀有な人だが、そのくらい平常時に未知の危機に対して行動できる人は稀だと思う。



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▼2:災害時はどう転んでも政府は批判される。
   および不確定要素が多い場合には決断が難しい。


『感染症の拡大』という専門性の高い課題について、政治家は素人だ。だからこそ前もって動けるだけの組織を作っておく必要性を1で話した。それに不備な状態で『政治家にどんな対応ができるだろうか??』

僕は厚生労働大臣は少し無能だとは思っているが、それでも少し優秀なくらいの大臣だったとしても決断は難しい。例えばクルーズ船の対応にあたっていた職員が2次感染したことが批判されている。それは当然批判されるべきことだがマズイのは厚生労働省の対応マニュアルを防護服を着が用意されていない部分であって、厚生労働大臣が役所のマニュアルを越えて(つまり専門の人達の決めたこと)を決断できることはそうそうない。

ただし厚生労働大臣が河野防衛大臣のような発信力があったらまた違ってきていたと思う。情報発信力において彼は優秀であり、緊急時にその優秀さはかなり重要だったりする。

感染力も危険性も分からないことだらけの新型ウイルスに対して、適切な対応をするのは難しい。ウイルスの発生源が中国とされているので発信されている感染者数などの情報も信憑性が高くない。いかに状況証拠をつみあげ推測し対策するのか、かなり難易度が高い。

また政治家にとって『感染が広がらないこと』だけに集中する訳にはいかない。感染を防ぐために渡航禁止をすれば観光業を中心に様々なところでダメージが来る。それにともなって倒産や自殺も増えることになるのだから、素早い対応をしても『過剰反応だ!』と叩く人も必ず出てくる。結果論として判断が正しかった間違っていたとかは言いやすいが不確定の状態でそれを決断することは難しい。

ただ『中国からの渡航を全面禁止していない』について疑問を持っている。ただし政府として国民や他国からも批判が多い中でそういう判断になっているってことは、それなりに僕らが知らない理由があるのではないか・・とも思っている。

 


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▼3:対策は危機を経験して進化する(&まとめ)

通常時に危機対応の組織を作るのは難しい。残念ながら既にミスしたところは取替しようがないのだから、今後それなりに頑張って危機が去った後に改めて、反省し次に活かして欲しいと思う。


まとめ

僕の評価は『危機対応においては"普通"』・・・優秀ではないが無能でもない。


厚生労働大臣を任命した責任とか、ITの担当大臣がパソコンを使えないとか、そういう任命のマズさはあると思う。台湾や中国など若くて優秀な大臣を起用するようになってきている。僕はこれは日本にとって大きな問題だと思っていて、安倍首相の問題というよりは日本の政治そのものの構造的なモノのように思える。政治家の高齢化と組織の硬直化は深刻。

また首相や大臣が『普通』というは擁護に聞こえるかもしれないが『首相が優秀でなくてどうするの?』とは思ってる。ただ優秀な人が政治家になりたがるってレアだと思うので仕方がないとも思っている。

なので今のところの理想は、首相は『そんなに優秀ではないが優秀な人を大臣とかに任命でき任せられるタイプの人』かな・・。